「AIが進化すれば、人間の仕事はなくなっていく」──コンタクトセンター業界でも、この数年で急速に語られるようになったテーマです。生成AIの実用化が進む中、現場には期待と不安が同時に存在しています。この問いに、業界の最前線に立つ人たちは実際どう答えるのか。ARアドバンストテクノロジ株式会社(ARI)は、2025年11月13日・14日開催の「CC/CRMデモ&コンファレンスin東京2025」の自社ブースにて、来場者を対象に緊急アンケートを実施しました。テーマは「5年後のコンタクトセンターの姿」。558件の回答から見えてきた、業界のリアルな未来予測をお届けします。
調査概要
本調査は、コンタクトセンターの将来像に対する業界関係者の意識を把握することを目的に実施しました。調査期間は2025年11月13日(木)〜14日(金)の2日間。当社ブースの来場者に「5年後のコンタクトセンターの姿」について、4つの選択肢からもっとも近いものを選んでいただく投票形式で実施、全部で558名の方に回答を頂きました。

全体結果:「AIと人の使い分け」が7割超
もっとも支持を集めたのは「AIと人の使い分けが進む」で73.5%。簡単な問い合わせはAI、複雑な案件は人が対応するという「棲み分け」の未来が最有力視されました。次いで「完全無人化・AI化」18%、「人が主に対応する」5%、「わからない」4%という結果です。
ただし「使い分け」派の内実は一様ではありません。コメントを見ると、①「今は使い分けだが、最終的にはAIに移行していく」といった、いずれ完全AIへ移行する過渡期と捉える意見、②「完全自動化を目指したいが、技術的な制約がある」など、理想は完全AIだが現実には人の対応が残るという意見、③「顧客満足度を考えると人の対応は欠かせない」といった、複雑な案件や雇用の観点から人の対応は不可欠とする意見の、3つの温度差が存在していました。同じ選択肢を選びながら、その先に描く未来は回答者によって大きく異なっていたのです。

属性によって見える”温度差”
「完全無人化・AI化」を選んだ比率は、SI・ベンダーが21.9%ともっとも高く、アウトソーサーは8.5%ともっとも低いという対照的な結果になりました。AI化を推進する立場か、オペレーターの雇用に直接向き合う立場かによって、見えている未来が異なることの表れと言えます。なお、ソリューションを提供する出展社も18.4%とSI・ベンダーに近い水準で、AIを提供する側と運用を担う側とで温度差が分かれる構図が浮かび上がりました。
一方、ユーザー企業の中で「完全無人化・AI化」を選んだ層からは、「休むことのないAIに業務を任せたい」という声も聞かれました。慢性的な人材不足を、AIによって解決したいという現場の切実な願いの表れとも読み取れます。

現場のリアルな声
数字の裏にある、回答者の生の声の一部をご紹介します。
- AIが人間を超えると言われている世の中なので、AI化していくと思う(SI/ベンダー)
- 感情は人という要素も、AIエージェントで十分ではないか(ユーザー)
- 自分のセンターのようなクレーム対応や、お客様の感情を慮った対応はAIにはできないと思う(ユーザー)
- AI化された知識が正しいかを判断するのは人間なので、最終的には人間が解決すると思っている(ユーザー)
- 複雑な案件や感情的な対応は人が必要だと思う(ユーザー)
- 今すでに使い分けが進んでいる状態。今後どうなるかはなかなかわからない(アウトソーサー)
- 5年後になるともうわからない。生成AIも5年前はなかったのだから(ユーザー)
期待、現実的な計算、慎重さ、そして戸惑い──ひとつのアンケートの中に、業界が今まさに抱えている多様な感情が凝縮されていました。
AI時代に問われる”人の価値”
歴史を振り返れば、産業革命のたびに労働の形態は変化してきました。肉体労働から頭脳労働へ、そして現在は「感情労働」の時代へと移行しつつあります。コンタクトセンターは、まさにこの感情労働の最前線に立つ現場です。今後、AIが定型的な問い合わせや申し込み対応を担う一方で、会話の本質を捉える力、多様な状況への柔軟な対応、そして顧客の潜在的なニーズを先読みする提案力といった、人にしかできない価値がより一層重要になっていくでしょう。顧客が本当に求めているのは、常に最適な答えそのものではなく、時には背中を押してくれる人間的な支援かもしれません。
私たちが本当に恐れるべきは、AIに仕事を奪われることではなく、AIの進化に対応できず立ち止まってしまうことです。効率性の追求だけでなく顧客満足度の向上へ、そして人にしかできない対応には正当な対価が支払われる時代へ。そのために必要なのは、現場の視点から少し離れた俯瞰的な視点を持つことだと、私たちは考えています。
自社にとって最適な「使い分け」の設計は、業種や商材の複雑さ、組織の考え方によって異なります。他社の事例をそのまま取り入れるのではなく、どこをAIに任せ、どこに人の価値を残すのかを、自社の実情に照らして見極めていくことが求められます。
まとめ
「AIと人の使い分けが進む」という未来像は業界内で広く共有されている一方、その解釈は立場によって大きく異なります。コンタクトセンター業界は今、AIとどう共存し、双方の強みを活かすかという実践的な方法論を模索する段階に入っています。正解はまだ誰も持っていません。だからこそ、業界全体で知見を共有し、学び合っていくことが、この変革期を乗り越える鍵になるはずです。
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